私は尾崎豊に没頭していた時があった。それは2013〜16年の3年間だった。今はその時ほど聴くことはなくなったが、それでも思い出したように聞くことはある。まぁ、今はその時よりも、聴く曲の幅が増えたので必然と減っていったのかもしれない。2016〜17年はMr.Childrenに没頭し、それからはiTunesでたまに最近の曲や有名な曲を聴き、そして今では特撮の曲ばかり聴いている(特に「超人機メタルダー」の「君の青春は輝いているのか」と「七星闘神ガイファード 」の「永遠の誓い」は最高である)。
というか、尾崎の前は90年代のBEINGアーティストにも没頭していた。まだ知らぬ、BEINGアーティストのCDを探すのが、とても楽しかった。それだけでワクワクできたのは、ほんとにいい思い出である。
私が尾崎を聴きまくっていた2013〜16年は、自分の人生に絶望していたり、人生そのものに対して疑問を抱きはじめた時期だった。まさに尾崎を聴くのは必然だったのだのかもしれない。当時の私は適応障害、うつ病を患っていた。
その頃には、詩を書き殴ってもいた。正直、自分ではまったく、黒歴史とは思っていないので悪しからず笑。
とにかく、何か自分の思っていることを表現したいという衝動に駆られていたのだ。学生時代は絵を描いたり、ストーリーを書いていたが、漫画・小説にしたりという形にはほとんどできていなかった。学生時代は何か一つのことを継続することができなかったのだ。だから、今となってなんとか一つのことを継続できているのは、自分でもびっくりしている。
話を元に戻すと、詩という形式は小説に比べてはるかに短い。だから思いついたら、とにかく書けるので、あの頃に自分に一番、合っていたのである。それが、巡り巡ってブログや小説、動画に繋がっているから、人生は不思議である。
ではここから、私の好きな尾崎の曲について語りたい。キリがなくなってしまうので、5曲に絞ったが、他にも好きな曲はたくさんある。
基本的に尾崎の曲は作詞・作曲は尾崎自身である。
・核(CORE)
約10分くらいある曲で、「街路樹」に収録されているアルバムバージョンと、シングルバージョンの2種類が存在する。特にシングルバージョンは鬼気迫ったものとなっており、感情をダイレクトに感じることができる。
なぜか、この曲はベストアルバムにはまったく収録されていない(スコアには収録されていることがある)。
10分近くある長い曲だが、一度聴き入ってしまうと、あっという間に時が過ぎてしまうから不思議である。
多分、一番好きな曲かもしれない。
ねぇ もしかしたら 俺の方が正しいかもしれないだろう
俺がこんな平和の中で 怯えているけれど
怯えたきった歌詞に、たたみかけるような曲調は、精神的に追い詰められた人間を見事に表現されている。また、クライマックスは絶叫に近いため、カタルシスすら感じる。
正直、絶望を経験したことがないと、この曲が一体、何を訴えたいかとピンとはこないかもしれない。この曲はとにかく、当時の私の心境とシンクロし、歌詞を読み解くというよりも、感じるものである。破壊的な衝動と恐怖心が共存するこの曲は、心の底に溜め込んだ感情を爆発させるのである。
また、"生存競争"という単語が歌詞に使われており、非常に印象的(「存在」という曲にも使われている)。
・街の風景
この曲はファーストアルバム「十七歳の地図」のトップバッターである。しかし、曲となったバージョンは詩の一部が削られてようで、その削られた詩を含んだバージョンをライブDVD「OZAKI・19」ではじめて聴いた。しかも、アレンジも変わっており、テンポも遅くなっている。
人間喜劇さ その通りだろうよ
だけど何がこうさせるのか わからないよ
愛情の渦だよ 窮屈になるだけ
だけど誰が止めるというの 祈るしかない生き物よ
私は聴いたことはないのだが、どうやら未発表音源の収録されたアルバムにはデモテープ版が収録されているらしく、タイトルは「"町"の風景」となっている。
このカットされた詩があるか、ないかでかなり全体のイメージも変わってくる。特に、"人間喜劇さ その通りだろうよ"というワンフレーズには痺れた。
・卒業
窓ガラスを壊して・・・という、若者の反抗の象徴的としてのイメージが強いが、私はその部分よりも、後半の歌詞に共感を覚えた。
あと何度自分自身 卒業すれば
本当の自分に だとりつけるだろう
一体どうすれば、理想の自分にたどりつけるのか?それが当時の私の気持ちであり、その気持ちを「卒業」が代弁、言語化してくれたのだ。
仕組まれた自由に 誰も気づかずに
あがいた日も 終る
仕組まれた自由・・・。私は何のために、絶望しているのかと考えた時に、社会に適応できずに絶望していることを気付かされたのだ。
その辺りから、物事の前提そのものを疑いはじめたのだった。
・太陽の破片
この曲を知ったのはテレビだった。何の番組かは忘れたが、秘蔵映像特集的な感じで、「夜のヒットスタジオ」でこの曲を歌っている尾崎の映像が流れていたのだった。曲のラストのシャウトには度肝を抜かれた。しかも、それを見たのが、ちょうど尾崎にハマるか、ハマらないかのタイミングだったので、どこか運命的なものを感じた。
この曲は逮捕後の活動再開の第一弾として発表されたものであり、どこか、胸に刺ささるものがある。
また、記憶違いだったら申し訳ないが、マザーアンドチルドレン版のライブDVD「LIVE CORE」では、ライブ映像の途中にイメージ映像が挿入されており、尾崎が滝に打たれながら、もがいているシーンがあったような気がする。それが強烈に焼き付いている。
だから 一晩中 絶望と戦った
この歌詞がやはり、身に染みる。
・永遠の胸
全体的に長い歌詞であるこの曲は、哲学的である。生きることを突き詰めたような内容で、尾崎の回答のようなものにも思えなくもない。
何故生まれたきたの
生まれたことに意味があり 僕を求めるものがあるなら
また、尾崎の曲には英題が存在し、この曲の英題は「Eternal Heart」となっている。カッコいい。
カードゲームをして育った世代の自分には、このようなワードは非常に心をくすぐる。
あの頃、自分が生きにくさを抱えてるということに気づき、世の中に対する疑問を持ち始めた時、その傍に尾崎があった。その疑問が芽を出した今、哲学にたどり着いたのだった。
非常に辛い時期だったが、振り返ってみると、あの頃のことが今になって、実を結んでいるのである。だから、絶望を抱えていても、希望は見失ってはいけないのだ。
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